スローなコメディにしてくれ
Photo N.Kurisu

2017.4.18

AI(人工知能)が人類の未来を脅かす時代に駄洒落で挑む会社の勇気の物語

by 須田 泰成

ファンキービジネス物語

AIに負けないアナログの方法(第一回)
駄洒落ブランディングで進撃するIT企業

株式会社スカイアーチネットワークスの場合

スマホでSNSを眺めていると、
「人工知能が人類の仕事を奪う」という内容の記事が、頻繁に現れる。
事務職は、100%がなくなる、とか。
弁護士、会計士などの高度な専門職でさえ、
かなりの高確率でAIに取って代わられる、とか。
ショッキングな内容が多い。

不安に駆られた人が、思わず記事をクリックして、
おそらく、たくさんのPV数を稼ぐのだろう。

2017年に世界にソコハカトナク漂う、
人類がAIに支配される未来のイメージ。
AIが人間の知性を超えるシンギュラリティーは、
2045年に起きると予測されている。

いろいろAIやビッグデータに関する書籍を読むなかで、
一般ピープルにも読みやすく、
オモシロク、ためになり、学習意欲をかきたてる新書と出会った。

『ビッグデータと人工知能』(西垣通・著/中公新書)

東京大学名誉教授を勤める第一人者による入門書である。

筆者が魅かれたのは、以下の帯のコピーだった。

「人工知能は人間を超えない」
「AI狂騒から離れて 人間の知性を鍛えるために」

本書の内容と筆致は、極めて冷静で、
200頁にある以下の文章がグッときた。

「ただし、ホワイトカラーにかぎらず、どんな職種でも、
人間の仕事の仕方が変わっていくことは確かだろう。
近未来のわれわれには人間しかできない仕事が求められ、
コンピュータにできるような仕事は人工知能が受け持つようになるというわけだ」

人間にしかできないことを真剣に考えなければならない。

そして同時に人間は、
AIをより良い判断や知能の増幅に使いこなす
スキルを伸ばし続けなければならないのだ。

本連載「AIに負けないアナログの方法」シリーズは、
AIが存在感を増す時代に、より人間らしくを追求して、
アナログな「人間しかできない仕事」で注目される人や企業を紹介する。

今回は、IT業界のド真ん中にいながら、
「駄洒落」で世界を変えようとしている企業
スカイアーチネットワークス社を取り上げる。


〈サーバー管理=サバ缶〉の駄洒落でブランディング開始

スカイアーチネットワークス社は、
創立17年目の独立系マネージドサービスプロバイダーである。
やや専門的な記述になるが、
インフラフリー、マルチクラウドの考え方で、
「ウェブサービスに最適なクラウドインテグレーター」を標榜する
ビジネスに直結したサーバー管理全般を提供する会社。
ざっくり言うとクラウドの運用にも精通した「サーバー管理」の会社である。

「サーバー管理」業務は、縁の下の力持ち。
イメージとしては裏方で、
一般的に会社の名前がメディア上に踊るようなブランディングは、
難しいと考えられてきた。
にも関わらず、スカイアーチネットワークス社の名前は、
2年前の2015年から、WEBを中心としたメディアに頻繁に取り上げられ、
表舞台に出るようになり、独自のビジネスの広がりが起きてきた。

きっかけは、駄洒落だった。

「IT業界は、やはり競合が多いですから、
なにか有効な営業ツールがないかと、常に悩んでいたんです。
ある時、〈サーバー管理〉がIT業界では
〈サバ缶〉、〈サーバー〉が〈鯖〉と呼ばれることも多いことから、
いっそのこと名刺と一緒に「サバ缶」を配るとオモシロイかもと思いついたんです。
そうすれば、少しでも弊社のことを覚えてくれる人が増えるかと思いまして。
藁をもつかむ思いではじめました」

そう語ってくれたのは、専務取締役の高橋玄太氏。

競争の激しいIT業界における営業活動の難しさが、言葉の端々から感じられた。

そして、2013年、ことあるごとに,
会社近所のスーパーで100円前後で売っているサバ缶を大量に買い占めては、
名刺と一緒に配る活動を始めた。

しかし、すぐに成果が出た訳ではなかった。

「サバ缶を渡すと、さすがにIT業界なので
〈サーバー管理〉〈サバ缶〉という駄洒落で盛り上がるのが
オモシロかったのですが、その場だけで終わってしまうことが、
ほとんどだったんです。
一年くらいすると、何かもう少しインパクトが欲しいと思うようになっていました」

ブレイクスルーを生んだのは、ある地方のサバ缶との出会いだった。

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須田 泰成

「スローなコメディにしてくれ」
 編集長+プロデューサー+ライター。
always look on the bright side of human life♩な
「もの+こと+ひと」を取り上げながら、
地域や企業のリアル・ムーブメントも熟成発酵させている。

世田谷区経堂と全国の地域の生産者と文化をつなぐ
経堂系ドットコムを2000年から運営。
イベント酒場さばのゆをハブに全国のつながりを醸す日々。
東日本大震災の津波で流された石巻の缶詰工場・木の屋石巻水産
の泥まみれの缶詰を洗って売るプロジェクトは、
さばのゆから全国に広まり、約27万個を販売。
工場再建のきっかけとなった実話をまとめた
復興ノンフィクション
『蘇るサバ缶〜震災と希望と人情商店街〜』(廣済堂出版)が
2018年3月に出版された。
その他、経堂こども文化食堂など、ソーシャルな活動も多い。

本業は、著述、映像・WEB制作、各種プロデュース。
著書に『モンティパイソン大全』(洋泉社)、など。
脚本・シリーズ構成に『ベイビー・フィリックス』(NHK),
『スーパー人形劇ドラムカンナの冒険』(NHK)など多数。

『シャキーン!』(NHK)『すっぴん!』(NHKラジオ第一)
などの番組立ち上げもいろいろ。

テレビ、ラジオ、WEB、脚本、構成、
執筆、制作、講演などの仕事多数。
お仕事も承っております。
Twitter:@yasunarisuda
facebook:https://www.facebook.com/yasunarisuda
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