スローなコメディにしてくれ
Photo N.Kurisu

2017.5.22

「林」と「森」の違いに笑いが潜む。「まず企画書」をやめてオモシロイ本を出す方法。

by 須田 泰成

人生を切り拓くイノベーション

ニッポンの はたらく(楽)ひとびと[第二回]

「試金石」が見える。「シカト」が見える。
TVのお笑いよりオモシロイ「知的発見と学習」の
このシリーズ本が凄すぎる!

「はたらく」に宿る「らく(楽)」を知り、
はた(傍=周囲)をらく(楽)にして、自分も人生を楽しむ、
一生もんの仕事に巡りあった人を紹介するコーナー。

第二回は、
『目でみることば』『似ている英語』『くらべる東西』など
写真と文の組み合せがユニークな、
老若男女が楽しめる話題の知的興奮本シリーズを世に贈る
著述家・編集者の岡部敬史さん(1972年生/44歳)

まず企画書!は、やめた方がいい

『目でみることば』(東京書籍・刊)にはじまる
岡部敬史さんのシリーズ本は、
テレビや雑誌の書籍紹介コーナーなどで話題沸騰。
売れ行きも良く、手堅く版を重ねている。

2012年に出た第一弾の
『目でみることば』(vol.1〜3)は、
日頃、普通に使っている言葉の語源となったモノを
実際に見せてしまう写真+文の本。

初めて手にした時の興奮は忘れられない。

ビジュアルが楽しく、老若男女にわかりやすい。
それでいて、深い知的好奇心も満たしてくれる。
バーに置けば、会話が弾むこと間違いナシ。

ありそうでなかった教養とエンタメの本なのだ。

例えば「シカトする」をご覧いただきたい。

「シカトする」は、もちろん、
「無視すること。そっぽを向くこと」という意味だが、
語源となったモノの実物は、こちら。

文字通り、鹿がシカトしている(笑)

岡部さんが簡潔にまとめた説明文は、次の通り。

無視することを「シカトする」と言う
が、これは花札の10月札「鹿」に由
来する言葉。ご覧のように花札の鹿は、
そっぽを向いたようなポーズをとって
おり、またこの札が10点であること
から「鹿の十(しかのとお)」、略して
「シカト」が、博打打ちの間で無視す
るという意味になった。

語源を言葉で説明するのは、
酒場のウンチクでも、よくある話だが、
語源そのモノを見せてしまうオモシロさは、
まさに「百聞は一見に如かず」のインパクト。

2014年の『似ていることば』は、
似ている言葉が表すモノが、
具体的にどう違うのか?を明らかにする、
ありそうで、なかった一冊。

例えば、こちら、林と森。

岡部さんによる説明文は、次の通り。

人間が生やしているのが「林」

自然と盛り上がったのが「森」

なるほどー!
目からウロコが落ちまくる。

ちなみに「林」の写真は、熊野古道。
「森」の写真は、青木ヶ原樹海。
その辺りの適当な林や森の写真ではない、
細部へのこだわりが素晴らしい。

2015年に出た『目でみる漢字』は、
文字通り、漢字の意味を写真で見せる一冊。
36の事例の中でも、思わず息を飲んだのは、
夜明けを意味する元旦の「旦」。
地平線を意味する「一」の上に「日」が昇る漢字は、
まさに、この写真の通りの「旦」であった。

ページをめくるたびにワクワクする。
何回見返しても飽きの来ない、
消費されないオモシロさが詰まった同シリーズは、現在8冊目。

世の中のモノの値段を比べる9冊目の『くらべる値段』は、
8月、書店に並ぶ予定というから、
来年には2ケタの大台にのりそうだ。

出版不況が慢性化する時代にあって、
岡部さんが作っているのは、オモシロイの連鎖反応、
プラスのスパイラルであるところが素晴らしい。

オモシロイ本が次のオモシロイ本につながり、
内容に心動かされたメディア業界の人たちから、
テレビや出版はじめ、いろんな仕事が入ってくるという。

いま流行りの「働き方」という言葉を使えば、
まさに理想の「働き方」を実践する岡部さんに、
好きな企画をカタチにし続ける方法について尋ねてみると、
ビックリする答えが返ってきた。

「まず企画書!と思わないほうがいいと思います」

以下、
岡部敬史さんの発想法&仕事術についての話をまとめた。

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須田 泰成

「スローなコメディにしてくれ」
 編集長+プロデューサー+ライター。
always look on the bright side of human life♩な
「もの+こと+ひと」を取り上げながら、
地域や企業のリアル・ムーブメントも熟成発酵させている。

世田谷区経堂と全国の地域の生産者と文化をつなぐ
経堂系ドットコムを2000年から運営。
イベント酒場さばのゆをハブに全国のつながりを醸す日々。
東日本大震災の津波で流された石巻の缶詰工場・木の屋石巻水産
の泥まみれの缶詰を洗って売るプロジェクトは、
さばのゆから全国に広まり、約27万個を販売。
工場再建のきっかけとなった実話をまとめた
復興ノンフィクション
『蘇るサバ缶〜震災と希望と人情商店街〜』(廣済堂出版)が
2018年3月に出版された。
その他、経堂こども文化食堂など、ソーシャルな活動も多い。

本業は、著述、映像・WEB制作、各種プロデュース。
著書に『モンティパイソン大全』(洋泉社)、など。
脚本・シリーズ構成に『ベイビー・フィリックス』(NHK),
『スーパー人形劇ドラムカンナの冒険』(NHK)など多数。

『シャキーン!』(NHK)『すっぴん!』(NHKラジオ第一)
などの番組立ち上げもいろいろ。

テレビ、ラジオ、WEB、脚本、構成、
執筆、制作、講演などの仕事多数。
お仕事も承っております。
Twitter:@yasunarisuda
facebook:https://www.facebook.com/yasunarisuda
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