2017.4.18
AI(人工知能)が人類の未来を脅かす時代に駄洒落で挑む会社の勇気の物語
ITと東北をつなぐ「サーバー屋のサバ缶」誕生!
「サバ缶を営業ツールとして配る活動にイノベーションが必要」と、
感じていた高橋さんたちに転機がやってきたのは、2014年の秋のことだった。
「世田谷区経堂のさばのゆというイベント酒場で、
驚くほど美味しいサバ缶と出会ったんです」
そのサバ缶とは、宮城県石巻市の木の屋石巻水産のサバ缶。
世界3大漁場と呼ばれる三陸は、魚の宝庫で、
特に石巻は、脂のりの良いブランド鯖「金華サバ」の産地。
「その缶詰は、朝、石巻漁港に水揚げされた新鮮なサバを冷凍せず、
刺身でも食べられる鮮度で、
そのまま缶詰にするフレッシュパックの製法で作られたものでした。
とにかく美味しかった!すっかり、缶詰の概念が変わりました」
このサバ缶には、さらに深いストーリーもあった。
2011年3月11日に起きた東日本大震災で、
海岸から150mの距離にあった木の屋石巻水産は、
本社・工場などが壊滅的な津波被害を受け、操業再開は、不可能と思われた。
しかし、前述のイベント酒場さばのゆが中心となって、ミラクルが起きた。
震災から2週間と少し経った頃、工場跡地の泥に埋もれた缶詰を掘り起こし、
東京に運び、洗って、300円の義援金と引き換えに1缶渡す活動が始まったのだ。
その活動は、じわじわ大きなブームとなり、
2011年の終わりまでに、約27万缶が全国の支援者に届き、
工場再建のきっかけとなったのだった。
いつの頃からか、洗ったラベルのない缶詰は、「きぼうの缶詰」と呼ばれ、
その実話は、テレビ、新聞、雑誌、ネットメディアなどで報道され、
全国的に有名になった。
「サバ缶の味とストーリーにグッときました。
配るなら、このサバ缶を配りたいという思いが強くなり、
2015年2月に、木の屋石巻水産さんに製造委託をし、
オリジナルのサバ缶を商品化したんです。
中味は、サバ味噌煮。
味噌は、同じく被災した仙台味噌の老舗、高砂長寿味噌を使っています」
商品名は「サーバー屋のサバ缶」となった。
「サーバー管理」と「サバ缶」を掛けた駄洒落から始まったプロジェクトが、
遂にオリジナル商品を生んだ。
駄洒落とソーシャルな精神は、ネーミングのみに留まらなかった。
値段は、380円。
売上の38%を被災地の子どもたちの支援活動に寄付。
ITと東北をつなぐサバ缶詰として、サバの駄洒落尽くしのノベルティーとなった。
しかも、食べてみると、美味しい。
発売後すぐにITメディアの「ねとらぼ」の記事が公開された。
タイトルは、以下のようなものだった。
「ついに本物の「鯖」がIT業界へ! サーバー管理会社が「サーバー屋のサバ缶」を商品化」
ネーミングが面白く、食べておいしい。
「サーバー屋のサバ缶」の名前は、想定外のスピードでIT業界に広がった。