スローなコメディにしてくれ
Photo N.Kurisu

2019.1.6

経堂の飲食店「真田丸」の戦い方の話

by 須田 泰成

地域を活性化するイノベーション

大河ドラマが「真田丸」だった3年前。
「うちもハッキリ言って真田丸みたいなもんだよ。
半径3、40mに6、7軒、値下げ合戦中のチェーン店があって、
包囲されてるようなもんだよ。
安い値段でおいしくないものを出して、飲み補題付きとかさ。
それにしても、値下げ合戦みたいなセコイ合戦はオレは嫌だね」と、
豪快に笑いながら言っていた経堂らかん茶屋の大将。
経堂に個人飲食店という城を構えて38年になる。

ちなみに、この写真が大将。
写真は、経堂こども文化食堂用の唐揚げをプレゼントする様子。
(毎回、寄付してくれるんです)

実は、その頃、かなり良いカタチになっていた大将の合戦の方法は、
全国の生産地の現場と人と直接つながるということだった。

消費税が5%から8%になってから2年というタイミング。

そして、一昨日の夜も、らかん茶屋の大将の生産地の話を聞いていた。
「いやあ、去年須田さんと行った高知の室戸の
キンメ船が釣ったマサバ、あんまり物が良いんで驚いた」
キンメダイとサバは棲息する海の深さが異なり、キンメは深く、サバは浅い。
普通に考えると同じ漁で水揚げされることが考え難いが、
室戸のある漁場では、水深200〜250mに仕掛けを沈めたキンメ漁の仕掛けを
引き揚げる際にサバが食いついてくるという。


「漁をするのが港から非常に近い場所みたいなんだよね。鮮度もいいんだよ」

そのマサバが、らかん茶屋に週に数本届く。


「メインの石巻の金華サバにプラス、こういうのがあるとバリエーションがついていいね」

私がらかん茶屋の大将、春さんと生産地をめぐり、現場を訪ね、人と会い、
地元の酒場で飲み、注文し、意見を交換し、また同じ生産地に出かけ、
新しい発見をして、また飲み、注文し、意見を交換して、、、
ということを始めて、6年目になる。


1ケース15キロ単位の直送で、魚介類だけでなく、野菜その他も、
消費税10%、15%時代に備える仕入れ態勢ができてきた(まだまだですが)。
時には、らかん茶屋、さばのゆがハブになっての共同(経堂)購入で、
ご近所の飲食店とのシェアも行う。

地方の生産者さんと直接つながり、
周辺のチェーン店(或いはスーパー、コンビニ)に負けない魅力的なメニュー、
競争力を維持し、売り上げを上げ、
余裕を蓄える経堂らかん茶屋さんのビジネスモデル。

余裕の部分で何をするかというと、
最初の写真のように経堂こども文化食堂に寄付をしてくださるのだった。
これが経堂の商店街の豊かさの循環。

こういう店がじわじわ全国に増えると良いなと思うし、
やっぱり自腹をきって行動しないと、待ってるだけでは、
オモシロイことは起きないですね。

須田 泰成

須田 泰成

「スローなコメディにしてくれ」
 編集長+プロデューサー+ライター。
always look on the bright side of human life♩な
「もの+こと+ひと」を取り上げながら、
地域や企業のリアル・ムーブメントも熟成発酵させている。

世田谷区経堂と全国の地域の生産者と文化をつなぐ
経堂系ドットコムを2000年から運営。
イベント酒場さばのゆをハブに全国のつながりを醸す日々。
東日本大震災の津波で流された石巻の缶詰工場・木の屋石巻水産
の泥まみれの缶詰を洗って売るプロジェクトは、
さばのゆから全国に広まり、約27万個を販売。
工場再建のきっかけとなった実話をまとめた
復興ノンフィクション
『蘇るサバ缶〜震災と希望と人情商店街〜』(廣済堂出版)が
2018年3月に出版された。
その他、経堂こども文化食堂など、ソーシャルな活動も多い。

本業は、著述、映像・WEB制作、各種プロデュース。
著書に『モンティパイソン大全』(洋泉社)、など。
脚本・シリーズ構成に『ベイビー・フィリックス』(NHK),
『スーパー人形劇ドラムカンナの冒険』(NHK)など多数。

『シャキーン!』(NHK)『すっぴん!』(NHKラジオ第一)
などの番組立ち上げもいろいろ。

テレビ、ラジオ、WEB、脚本、構成、
執筆、制作、講演などの仕事多数。
お仕事も承っております。
Twitter:@yasunarisuda
facebook:https://www.facebook.com/yasunarisuda
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