磨かれる靴を眺めながらワインを飲む至福
安部さんが、靴磨きにかかる時間は1足20分からである。
靴磨きバーとは、靴を磨いてもらっている間、
カウンターで飲めるシステムのことなのだ。
「毎日、忙しくて靴を磨くヒマがない時、ここはサイコーです。
夜遅くまでやってる靴磨きの店は珍しい。
靴がピカピカになるのを眺めながら飲むのにハマっています」とは、
たまたま来られていた常連男性。
私も靴を磨いてもらうことにした。そして、サービスの赤ワインをいただいた。
ちびちび飲むうちに、自分の靴の番がきた。
安部さんが、よく動く指で様々な道具を使い、
キュッキュキュッキュと小気味よい音をさせながら、
細かな動作を積み重ねて磨かれる光景は、見ていて飽きない。
次第に光沢が現れる様子は神秘的ですらある。
朝、日の出がじわじわ現れる時の山肌や、
夕暮れ時の海岸を眺めるような自然の美を思わせる感覚。
靴磨きを眺めながらワイングラスに口をつけると、
常連さんの「ハマっています」の言葉の意味がよくわかった。
「この靴磨きショップに来て、
それから、エキニシ界隈の飲み屋に流れる人も多いです。
安部さんの世代の若い人も多いので、
この店の存在が、昭和の古い街を活性化してると思います」と、山根さん。
安部さんの靴磨きは、
昭和の古い飲屋街に新しい流れを呼び込んでいるところもオモシロイ。
商売としても、広島を中心に各地でイベント出演や出張靴磨き、
講習会などが増えている。
2016年秋には新宿伊勢丹で行われた
「TOKYO MEN`S FES 2016」に中四国地方から唯一参加した。
4月には、新しく広島駅南口の商業施設 エキシティヒロシマ
EDION蔦屋家電2Fに新店舗 92-NINETYTWO- をオープン。
今までの靴磨きや靴修理屋さんのイメージはとは違う
モダンな店内でお気に入りの靴やカバンの磨き、ケア、修理を行う。
「カウンターでの靴磨きもBURIE同様お楽しみ頂けます。
『長く大切に履くというオシャレ』
長く履きたくなる靴に一緒に育てていきましょう」
安部さんの未来も明るい光沢に包まれているように感じる。
「お酒は好きで、よく飲み歩きます。
瀬戸内の魚介類と日本酒の品揃えの多い店によく行きますね」と、
実にうれしそうに語る安部さん。馴染みの店も多いという。
靴磨きを楽しみ、靴を輝かせ、靴の持ち主を幸せにして、
仕事場のある街の飲み屋を活性化する。
笑い(コメディ)も多く。洒落た会話(コミュニケーション)も尽きない。
安部さんが暮らしているのは、
「はたらく(楽)」の楽が循環する人の輪(コミュニティ)の中である。
こんな「はたらく(楽)」20代が増えると、日本の未来に磨きがかかるに違いない。
安部さんの日常は、良質なスローコメディだと感じ、にんまりした。
(関連リンク)
靴磨き専門店「BURIE」
https://burie.shopinfo.jp/