スローなコメディにしてくれ
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2017.12.29

酒場の記憶。経堂ラーメン酒場「からから亭」の銅の鍋と1968新宿騒乱。

by 須田 泰成

酒場が地域と人生を豊かにするコメディライター日記

酒場の記憶(その1)
経堂ラーメン酒場「からから亭」

四年前の12/27に旅立った
からから亭の栃木要三さんが
大切に持っていた銅の鍋を受け継いだ。
この鍋は、栃木さんが、
どさんこラーメンの創業者と一緒に
どさんこラーメンを立ち上げ、
栃木さんが新宿の2号店の店長となり、
新宿三越裏、映画の昭和館前の
コの字型カウンターが二つある店を
任された時のトンカツ用の鍋。
ラーメンとトンカツの店だったそうで。
2000年頃よく深夜のガラガラの
からから亭で栃木さんは、
その新宿のお店の話をよくしていました。

「須田さん、あのさ、うちはいま、
こんなガラガラ亭で貧乏してるけどさ、
新宿の店は、ほんとスゴかったのよ。
オレの人生で一番売ったのは、
1968年10月21日の新宿騒乱の時だね。
忘れもしない。
学生も機動隊もやっぱりああいう時は
腹が減るんだね。
コの字のカウンターの入って左を学生さん、
右を機動隊とか警察関係者、
それで店ではケンカしないでくださいって、
角材とかゲバ棒は店内持込み禁止って、
もう休む間もないほど味噌ラーメン作り続け、
トンカツ揚げ続け、飯を炊き続け、
オレ人生63年ほど生きてきたけど、
あの日ほど儲かった日はなかったね(笑)
オレは苦学生でラーメン屋になって、
全共闘の学生たちの言うことも
一理あるとは思ったけど、
東北訛りの若い警察官見たら、
もうリンゴのほっぺ、
あどけない顔してるのよ。
オレが育った墨田区の東向島、
知ってる?王貞治とか木ノ実ナナとか
同じ小学校でさ、人口密度世界一、
ものスゴイ貧民街だったわけ、
近くで働いてる金の卵って
いいように言われて集められて
集団就職でやってきた
工員さんと同じ匂いがするわけよ。
そういう時は、麺もご飯も無条件で大盛り!
なんだかわかんないけど、
腹一杯食べて欲しくなってさ。
もう一杯いける?
おっかあ、看板だ。
外の電気消しな。
あ、いまからお代はいいからさ」
と、とくとくと焼酎を注ぎ、
空が白むまでいろんな話を聞いたことがあったっけ。

こんなことを昨日のことのように思いだす。
さて、この鍋、メンテして、
どんな風に使おうか、何を作ろうか。

からから亭のギョウザ、やさしい味だったな!

須田 泰成

須田 泰成

「スローなコメディにしてくれ」
 編集長+プロデューサー+ライター。
always look on the bright side of human life♩な
「もの+こと+ひと」を取り上げながら、
地域や企業のリアル・ムーブメントも熟成発酵させている。

世田谷区経堂と全国の地域の生産者と文化をつなぐ
経堂系ドットコムを2000年から運営。
イベント酒場さばのゆをハブに全国のつながりを醸す日々。
東日本大震災の津波で流された石巻の缶詰工場・木の屋石巻水産
の泥まみれの缶詰を洗って売るプロジェクトは、
さばのゆから全国に広まり、約27万個を販売。
工場再建のきっかけとなるなど、ソーシャルな活動も多い。

本業は、著述、映像・WEB制作、各種プロデュース。
著書に『モンティパイソン大全』(洋泉社)、など。
脚本・シリーズ構成に『ベイビー・フィリックス』(NHK),
『スーパー人形劇ドラムカンナの冒険』(NHK)など多数。

『シャキーン!』(NHK)『すっぴん!』(NHKラジオ第一)
などの番組立ち上げもいろいろ。

テレビ、ラジオ、WEB、脚本、構成、
執筆、制作、講演などの仕事多数。
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